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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)1142号 判決

被告人

森隆治郎

主文

原判決を破棄する。

本件を原審八幡簡易裁判所に差し戻す。

理由

原審検察官神野嘉直の控訴趣意第二点について。

所論のように原審第一回公判期日において原審検察官が冐頭陳述に引続いて各種証拠の取調を請求し、之に加えて被告人の司法警察員及び検察官事務取扱に対する各供述録取調書二通の取調の請求をもなしたところ原審は右各供述録取調書についてはその証拠の取調の請求を却下する決定も又その証拠調の決定もなすことなくその証拠の取調を経ずに審理を終結し被告人に対して無罪の言渡をしたことが記録上明らかである。而して刑事訴訟規則第百九十条第一項の規定によれば証拠調又は証拠調の請求の却下は決定でこれをしなければならないのに、右のように右各供述録取調書の証拠の取調の請求について何等採否の決定をもなさなかつた原審の訴訟手続は右刑事訴訟規則第百九十条第一項の違反があり、その違反は、右各供述録取調書が、所論のように、本件公訴事実の認定上極めて重要なものであることが記録上明らかに窺えるので、判決に影響を及ぼすことが明らかであるから原判決は刑事訴訟法第三百七十九条、第三百九十七条によつて破棄を免れない。

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